長椅子と本棚2

ダイアリーから移行しました。

なぜスキャンダルを起こしたAKBメンバーが書くブログのタイトルは「皆さんへ」なのか?

なぜ「皆さんへ」だけで悪い知らせとわかるのか?

 昨年の、指原莉乃増田有華両名のスキャンダルへの謝罪記事は、いずれも全く同じタイトルを持っている。

 さらに、HKT48からの大量辞退の記事と、光宗薫のAKB辞退の記事。これも似たようなタイトルになっている(ところで、こういう場合たとえばハロプロなら「脱退」となると思うのだが、事務所と別組織なので「辞退」という言い方になるのだろうか。興味深い。)。

 そして、宮澤佐江の上海移籍報告。

 これらの記事は、なぜ全て「皆さんへ」という言葉を含んでいるのだろうか?

 また、AKBと関係ないが、先日、以下のようなツイートを見て、「あー成瀬心美さん引退するんだ」と、思った。(本当は下の方ではなく、鍵垢の方のツイートで見た。この方は私が見たものに近い中でTwitter検索上位にたまたま引っかかった方である。)

 しかし、このツイートだけで引退だな、と思ったというのは、よく考えると不思議なことではないだろうか。なぜ、「皆さんへ」というタイトルだけで、引退、とほぼ見当がつくのか。

 スキャンダル、引退、海外移籍。これらの事例から考えるに、「オフィシャルブログに掲載される「皆さんへ」というタイトルの記事は、たいていあまり良くないこと、例えば引退やスキャンダルの報告を想起させる」という法則があるように思える。しかし、なぜ「皆さんへ」というタイトルは、あまり良くないことの報告を想起させるのだろうか。また、この風潮はいつから始まったのだろうか。

「皆さんへ」小史

 このブログの歴史系の記事ではいつもお世話になっている機能なのだが、Googleで、一年ごとに期間を区切って「皆さんへ+オフィシャルブログ」で検索してみた。日本エンタメ史としてもおもしろかったので、目ぼしいものを紹介しつつ遡ってみよう。

 昨年、2012年については、既に見たAKBの記事がずらりと並ぶ。それでは、これ以前の年ではどうだろうか。

 外せないのは、現在でも「皆さんへ」だけでGoogle検索すると二番目に出てくるこの記事。

2013年、北乃きいがちょい汚れキャラとして曲がりなりにも人気を保っていることを考えると感慨深い。

 さらに2009年には、下のような、パロディ的な記事が見つかった。

内容は、ウェディングドレス姿の撮影の報告、件、エイプリルフールネタである。これは「みなさんに報告があります」というタイトルが結婚報告を想起させることが既に定着していたことを示している。

 08年には、辺見えみりの離婚報告がある。

 そして、Googleで小一時間で調べがつく限りで最古の記事が下のものだ。

引退報告。現在と全く同じ使い方だと言える。しかし、これより古い記事は簡単には見つからない。「芸能人ブログ」というジャンルの確立に伴い、この前後頃から普及し始めたのではないかと予想される。

なぜ「皆さんへ」か?

 前の項では、「みなさんへ」というタイトルであまり良くないことを報告するブログは07年頃から見られる、と指摘した。しかし、なぜ「みなさんへ」なのか。この源流について、二つの仮説を提起してみたい。

 まずは、ブログにおける「皆さんへ」は、ワイドショーなどでよくある、「FAXでのマスコミへの報告」という文化の嫡流だ、という仮説だ。誰しも、スキャンダルの謝罪や引退、あるいは結婚のような改まった報告に際して、マスコミ宛に「マスコミの皆さんへ」というFAXが送られる、という場面を、ワイドショーで見かけたことが有るだろう。そして昨今のワイドショーでは、この代わりにブログ記事が紹介されることがある。このときブログはマスコミだけでなくファンを含む不特定多数が読むことができるから、「マスコミの皆さんへ」から「マスコミの」がとれて「皆さんへ」となったのではないだろうか。

 これに加えて思いつくのは、ブログに私信を書く、という文化の存在である。上で挙げた最古の例より前に、以下の例があった。

内容は、感謝の気持ちを伝える私信である。このように、ブログにセミフォーマルな私信を書くという場面は、芸能人に限らず、一般のブログでもしばしば見かける。このことは、ブログは不特定多数に公開された日記であると同時に、誰かに直接メッセージを届けるメディアでもあるということだ。「皆さんへ」というタイトルの記事は、ブログが持つ後者の機能を利用して、ファンに「私信」として直接報告をする、というニュアンスを持っているのだと考えられる。

 また、これらのことから、なぜ良くないニュースが多いのか? という問いにも答えられるように思う。実は、「皆さんへ」は良くないニュースではなく、改まった報告に使われるのだ。実際、結婚報告や、ブログ開設の報告など、良いことを報告する場面でも、「皆さんへ」が用いられることがある。「皆さんへ」は一般に改まった報告に用いられるが、芸能人がファンに向けて改まった報告をする場面というのはどちらかといえば悪いニュースが多い、というのが真相ではないだろうか。

 ところで、いま指摘した二面性は、なぜ「皆さんへ」というタイトルが用いられるかの理由だけでなく、我々が「皆さんへ」というタイトルからスキャンダルを想起するということの理由にもなっているように思う。日記のような記事であれば、タイトルが「皆さんへ」となることはありえない。それゆえ、このタイトルを見た時、読者は「お、これは日記ではなくて私信なんだな、何かが改まって報告されるのだな」と思わせられるのである。