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長椅子と本棚2

ダイアリーから移行しました。

なぜGARNET CROWの解散コメントは「全てを出し切りました」だったのか?

 ここのブログには書いたことなかったと思うのですが、私はGARNET CROWの10年来のファンです。初めてコナンの主題歌として聞いた時にはなんとも思っていなかったのが、家族がレンタルしてきた1stアルバムの歌詞カードを読んで一気に惹かれ、思春期にはアルバムをヘビロテし、東京に出てきてからはライブにも行くようになり、気づけば10年以上が経過していました。

 そんな彼らが、3月29日に解散を発表しました。

 4人組グループのGARNET CROWが30日、東京・TOKYO DOME CITY HALLでライブ『livescope2013 〜Terminus〜』を開催。ツアー最終日の同日、アンコールを含む全25曲を熱唱した。最後の曲を歌い終え、メンバーがステージ中央に集まると、突然、ボーカルの中村由利の口から13年間の活動に終止符を打つと解散が発表され、約3000人のファンの悲鳴まじりの声で会場は一時騒然となった。

 中村は「ここで私たちから大切なお知らせがあります。 私たちは次の東京、大阪のライブをもって解散します。GARNET CROWとしてすべてを出し切りました。 13年という長きにわたり応援してくださって、本当にありがとうございました。今は、ファンの皆様への感謝と達成感でいっぱいです」と噛み締めるように語り、「ラストライブは、皆さんと盛り上がりたいと思いますので、皆さん遊びに来てくれますかー? 盛り上げてくれますかー? 一緒に楽しみましょー! ラストライブで待ってます!」と最後まで全力疾走で駆け抜けることをファンと約束した。

GARNET CROWが解散を発表 6月にラストライブ - 芸能ニュース一覧 - オリコンスタイル - エンタメ - 47NEWS(よんななニュース)

 私はこの発表をまさに会場で聞きました。これまでも解散説は何度も囁かれていましたし、最新アルバムのタイトルはTerminus。「ファンの悲鳴まじりの声で会場は一時騒然となった」とありますが、実際には「とうとう来たか…」というしみじみとした哀しみに包まれていたように思います。今日の記事は、彼らに捧げる感謝の気持ちです。

解散理由の四つのパターン

 さて、この記事で注目したいのは、彼らの解散コメントが「GARNET CROWとしてすべてを出し切りました」であった、ということです。このコメントは、ファンに彼らなりの精一杯の誠意を感じさせるものでした(多少合理化が入っているかもしれませんが)。このことの理由について、お話したいと思います。

 もちろん、このコメントが真実そのものだと、無邪気に信じているわけではありません。4人の、しかも男女二人ずつのグループ。年齢非公表とはいえデビュー13年ということからある程度察しのつく年齢。いつの間にかGIZAというレーベルの筆頭アーティストになっていたこと。他の理由を邪推させる要素はいくらでもあります。ここで言いたいのは、仮にどんな事情があったとしても、彼らがGARNET CROWとして、ステージの上で述べるコメントとしては、「全てを出し切った」が最もふさわしかった、ということです。

 さて、「全てを出し切った」というコメントは、それほど独創的なコメントというわけではありません。様々なバンドの解散コメント(「解散理由」ではない)は、ざっくり言えば、「音楽性の違い」型、「私生活を優先」型、そして「全てを出し切った」型の三つに分けられます(参照:バンドやユニットの解散コメントのまとめ - NAVER まとめ)。GARNET CROWは、これらのうち、三番目のパターンを選択しました。なぜでしょうか。

なぜ「音楽性の違い」ではなかったのか?

 まず、「音楽性の違い」というパターンについて考えてみましょう。

 GARNET CROWというグループは、ボーカルの中村由利が作曲、キーボードのAZUKI七が作詞、同じくキーボードの古井弘人が編曲を担当することで成立しています。バンドであると同時に楽曲制作チームでもある彼らは、ときに「サウンドクリエーター集団」と称されることもありました。

 このような制作体制をとるGARNET CROWメンバーの個性について、ボーカルの中村由利は、3年前に以下のように語っていました。

−−4人ともかなり個性的なメンバーだと思うんですけど、役割分担をして作業していく中で「私のイメージしている世界観と違う」的なところでの衝突はないんですか?
中村由利:それはなくて。自分が作ったデモの雰囲気とガラって変わることはよくあるんですけど、それがあるから面白いって思ってますね。自分だけでは出せない世界を他の3人が引き出してくれる。自分ひとりでは限界があると思うんですけど、4人で作り上げていくとどんどん曲が変化したりとか、もっと良い曲になったりするんです。自分が見えてなかったその曲の側面というのを他のメンバーは見てくれているから、美味しいところをちゃんと引き出してもらえるんですよね。そうして曲が変わっていくからこそ刺激があって面白い。「今回はどういう詞が乗ってくるんだろう?」とか「どういうサウンドになるんだろう?」っていうところでのワクワク感がすごいんです。

GARNET CROW 『Over Drive』インタビュー│Special│Billboard JAPAN

 ここでは、四人の個性の違いが「ワクワク感」として肯定的に捉えられています。もちろん、このような蜜月といって良い関係が本当に13年間ずっと持続していたかは不明です。しかし、基本的にはこのような関係が長く続いていたと考えてよいでしょう。13年間活動を継続できたということそれ自体が、その証拠であるように思います。

 このような事情を踏まえると、「音楽性の違い」による解散は、GARNET CROWにはふさわしくないように思います。少なくとも「音楽性の違い」を筆頭理由に掲げていたら、ファンの間には、「ずっとあんなこと言ってきたのに今更それかよ…」という失望が広がったと容易に想像できます。彼ら自身にとっても、13年続いた関係を解消するための理由として、自らを納得させる理由とは言えなかったのではないでしょうか。

なぜ「私生活を優先」ではなかったのか?

 「私生活を優先」型の解散理由とは、例えばメンバーの結婚・出産による脱退とか、「普通の女の子に戻る」とか、音楽以外の夢を目指す、といった理由のことをざっくりと指しています。彼らの年齢(こういってはなんですが、彼らの年齢は非公表、というより「公然の秘密」で、なんとなくみんな察してもいるし、ちょっとネットで調べれば当然のように暴き出されています)を考えれば、これからの人生とか諸々を考えてもいいはずです。また、表には出ていないけれども、これらの理由が裏にあるということは十分考えられます。しかしながら、彼らは少なくとも、それを公に口にすることは選ばなかった。のことは、GARNET CROWファンに、彼らのプロとしての誠意と意地を感じさせるものでした。

 なぜ彼らのプロ意識が私生活を語らせないのか。これは、いわゆるビーイング系アーティストのメディアコントロール戦略と、GARNET CROWの活動スタイルの両方が、密接に関わっています。

 メディアコントロール戦略というのは、メディアへの出演を極力控えるという、Beingが伝統的に選択してきた謎の戦略のことです。が例えばZARD坂井泉水がデビュー当時全く姿を見せることなく、彼女の死の真相すら今も謎に包まれている、ということは、これを象徴していると言えるでしょう。GARNET CROWも、一時期を境に緩和されてきたとはいえ、基本的にはこの戦略からスタートしました。このことは、以下で述べる彼らの活動スタイルが形成されるにあたっての重要なファクターをなしていたといってよいでしょう。

 しかしこれだけでは、彼らが私情に全く触れない理由としては不十分です。例えば初期の倉木麻衣は同じ事務所に所属していましたが、メディアコントロールからくるミステリアスさに加えて、「思春期の少女っぽいみずみずしい感性」のようなものを売りの一つにしていました。これに対して、GARNET CROWは、そうした彼らの個人的な属性と、彼らの作品とを出来る限り切り離そうとしてきました。彼らが私情に触れようとしない直接の理由、GARNET CROWとそのファンが作ってきた、彼らの仕事に対する考え方に求められます。上記の戦略は、この考え方の形成に結果的に貢献したという点から理解されるべきでしょう。

 それでは、GARNET CROWが培った考え方とは何か。随所で語られていることですが、最新の(そしておそらくは最後の)シングルである『Nostalgia』についてのインタビューでは、以下のように語られています。

──歌詞はAZUKI 七さんから上がってきた際、どんな印象でしたか?
中村 韻を踏んでる部分があったり、ちょっと面白いなって思いました。サビの「Love forever」はデモから私が使ってた言葉で、そのまま使ったんだなっていうのも個人的には面白くて。全体的にはメロディに忠実に、メロ先行ではめたのかなって感じがします。サウンドに溶け込むような言葉選びをしているなって。
──歌詞について何かAZUKI 七さんとお話されたんですか?
中村 してないですね。あまり読み込んだり聞いたりすると先入観を持って歌うことになるので、話し合いはいつもしないんですよ。
──そうだったんですね。
中村 はい。あとは最初に歌詞を見たときのファーストインプレッションを大事にしたいので。新鮮さやワクワク感、ドキドキ感を歌にパッケージしたいから、あまり歌詞を読み砕かず、カッコいいとか素敵だなと思った最初の素直な気持ちを歌に乗せるようにしています。リスナーの皆さんにも、その歌を聴いて自由に歌詞に共感したり、いろんな考えや気持ちを持っていただけるとうれしいなって。
──なるほど。
中村 だから歌詞の最終的な結論は、聴き手に委ねてるんです。皆さんに届いて初めて曲が完成すると思ってるので、押し付けになるような歌は避けたい。だからできるだけニュートラルに、フラットに歌うことを心がけてます。

ナタリー - GARNET CROW「Nostalgia」インタビュー (1/3)

「リスナーの皆さんにも、その歌を聴いて自由に歌詞に共感したり、いろんな考えや気持ちを持っていただけるとうれしい」。「皆さんに届いて初めて曲が完成すると思ってるので、押し付けになるような歌は避けたい」。過去の楽曲のインタビューでも、特に歌詞の解釈に話題が及ぶと必ず、中村由利はこう答えています。

 これは、AZUKI七の書く詞が無機質であるということを意味してはいません。上のNostalgiaはタイトルからして郷愁を歌っているし、「衝動それは時に堂々生きた証を追い求める」「正しさはなくても握り締めてこの手にとどめたい」等々といった歌詞に彩られています。この様々な感情を呼び起こす歌詞に、できるだけ感情を乗せずに歌う、それが彼らが培ってきたスタイルです。

 このことは、作品世界から、彼らの個人的な思いが排除されるということを意味しています。彼らの楽曲に、「思春期のみずみずしい感性」だとか、「成熟した大人の恋愛」といった彼らの属性に関わるコピーではなく、「サウンドクリエイター」だとか「”音室”育ち」だとか、音だけに特化したコピーが付けられている点も、一貫しています。

 上記のスタイルは楽曲だけでなく、彼らの活動姿勢全体に反映されています。例えば、なぜTwitterやブログをやらないのか? という問いに対して、中村由利は以下のように答えています。

ジャケットとかいつも綺麗に写真も撮って頂いて、そこにはいろんなスタッフさんが関わっている訳ですよね。1000枚近くの写真から最高の1枚を選んだりして。それなのに居酒屋で騒いでいる写真を酔った勢いでアップしようもんなら、今まで築き上げてきたものが台無しになるじゃないですか。それは申し訳ない!

GARNET CROW 『メモリーズ』インタビュー│Special│Billboard JAPAN

 「今まで築き上げてきたもの」。この言葉に、彼女の強いプロ意識、それも職人っぽい意識が伺われます。また上のコメントからは、この意識が楽曲だけでなく、ジャケット等の写真を含む活動の全体に反映されているということも見て取れます。

 今回の解散発表も、彼らの作品たるステージ上でのことでした。そうだとすると、そこでのコメントに私情を持ち込むこと、私生活を理由として挙げることは、まさに「今まで築き上げてきたもの」、彼らの仕事のスタイルを台無しにすることにほかなりません。このことを分かっていたからこそ、彼らは私情ではなく、あくまでも仕事をやり切ったということを理由に挙げました。そしてファンも、そこに彼らの誠意を感じたのです。

「すべてを出しきりました」

 GARNET CROWの解散コメントは、まさに彼らの「作品」の一部だった、彼らがステージで語るコメントとして、その他の理由はふさわしくなかった、このことは、ご理解いただけたのではないかと思います。

 これに加えて、「全てを出し切った」というコメントは、過去の彼らの発言とも整合しています。過去に中村由利は以下のように発言しています。

ーーでは、GARNET CROWの活動を続けていく上での原動力ってどんなものだったりするんでしょう?
中村由利:自分が飽きないことですね。新鮮な曲を作ること。ライブとかいろいろあるけど、まずは曲作りに飽きないこと。惰性で作るというのは一番よくないですから。まだまだ「面白い」と思えたり、「今度はこんな曲を作りたい」「こうしてみたい」と思えることが大事なのかなって。あとは、1曲1曲に新鮮さを覚えられるかどうか。

GARNET CROW 『Nostalgia』インタビュー│Special│Billboard JAPAN

 「自分が飽きないこと」、「惰性にならないこと」。これが彼らの活動の原動力だとすると、彼らの解散理由としては、これの否定こそが最もふさわしいでしょう。惰性でしか作れなくなった、新鮮さがなくなった、もっとはっきり言えば、飽きた。このことをさらに裏返して言えば、「全てのことを出し切った」になります。実は前々から、「飽きたら辞める」ということは宣言されていたといえなくもありません。

 というわけで、GARNET CROWの解散コメントがファンにとっていかに完璧なものだったか、ということを論じてきました。そうはいっても、ファンとしてやりきれない想いは当然ながらいくらでもあります。上に引用した「飽きないことが原動力」というインタビューは昨年9月。そこから数ヶ月で一気に飽きて解散ってどういうことだよ、本当はもっと何かあるんだろ、と邪推したくなる気持ちも当然あります。それでも、私達にとっては、ステージで彼らが語った言葉が全て。私がそこから何を受けたったかを、精一杯に書いてみました。

 ここまでお付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございました。最後に、GARNET CROWの詞からの中学生みたいな引用で、この長い長い、出来の悪いポエムを閉じさせていただきたいと思います。GARNET CROWの皆さん、ゆりっぺ、七さん、おかもっち、古井さん、最後までちゃんとGARNET CROWを守ってくれてありがとう。でも、まだ今は笑顔でさよならは言えないよ。

君 連れ去る時の訪れを
いつか愛しく抱きしめることが出来るのかな
ねぇ 天(そら)をみて晴れ間がみえるね
虹がもうすぐ 架かる頃だよ
君 連れ去る時の訪れを GARNET CROW 歌詞情報 - goo 音楽