JINSでメガネを買って初めてわかった「JINSバレ」という問題
「JINSバレ」という問題
以前使っていたメガネが壊れてしまい、はじめてJINSでメガネを買った。品質、対応、価格、全てに満足している。とくに品質や対応に関して二の足を踏む必要は全くないと感じた。しかしながら、次に買い換えるときも絶対に利用しよう、とは思わなかった。なぜなら、実際に購入したことで、ある大きな問題に気づいたからだ。その問題とは、「JINSバレ」である。
メガネの購入にあたっては、当然ながら、売り場のフレームをいろいろと見比べることになる。かなり安いとはいえ、メガネは自分の顔の印象の大部分を決めてしまうものである。真剣に選ぶ。そうすると、この過程で、だいたいのデザインの傾向が把握できてくる。
このことが、「JINSバレ」につながる。このことには、購入後の帰路に気づいた。道行く人のメガネを、「JINSっぽいメガネ」と「JINSっぽくないメガネ」に自然と分類してしまうのだ。もちろん、実際には別の店で購入しているのかもしれない。しかし、それまでは単なる「おしゃれメガネ」というふうに見えていたメガネの数々が、「JINSっぽいおしゃれメガネ」と「JINSっぽくないおしゃれメガネ」に二分されて見えてくる。これは衝撃だった。
JINSとユニクロの共通点
この、JINSのメガネが分かってしまう感覚は、ユニクロのフリースが分かってしまうときの感覚に近い。この現象を指す「ユニバレ」という言葉もある。
ユニバレとは衣料品の生産・販売をしている「ユニクロ」と、秘密や嘘などが露顕することを意味する「バレる」から成る造語で、身につけている服がユニクロの商品であると周りの人に気付かれることを意味する。ユニクロブランドのカジュアルな服には安価というイメージがあり、ユニバレ=恥ずかしいという意をもって使われることが多い。同じく、安価な服を売っている店というイメージが強い「しまむら」の服に対しても、シマバレという言葉が使われている。
ユニバレは2009年以前から使われている言葉だが、ファッション・女性誌・トレンドをウォッチするブログ「Elastic」が2009年1月に取り上げ、広く普及した。(ユニバレ(ゆにばれ) - 日本語俗語辞書)
ユニバレは、ユニクロがその安価さと利便性ゆえに爆発的に普及したことにより、逆説的に生じてしまった問題である。ユニクロで服を選んだ経験があれば、だいたいの傾向が把握できるようになる。それゆえ、一度ユニクロで買い物をした人は、他人がユニクロを着ていることに気づくようになってしまうのだ。
これと全く同様のことが、JINSでも生じうる。今はまだ、JINSは発展途上である。しかし、おそらくJINSはこのまま成長を続けるだろう。すると、皮肉なことに、周囲の人のメガネが「JINSっぽい」かどうかを判別できる人の数が、これからどんどん増えていくことになる。これが一定数を超えると、JINSバレは恥ずかしい、という価値観が生まれてしまうのではないか。
ところで、JINSにユニクロと同じ問題が生じてしまうのは、当然のことでもある。なぜなら、JINSとユニクロの業態が類似しているからだ。この類似は、JINSの田中社長自身によって明快に説明されている。
われわれはユニクロさんと同じ、SPAなんですよ。Speciality store retailer of Private label Apparelの略で、もともとは製造から小売りまで一貫して行うアパレル業のことをさしていますが、われわれは眼鏡業界のSPAを自認しています。(「JINSをアイウェア業界のユニクロに育てる」、ジェイアイエヌ田中社長 - クラウド Watch)
また、JINSはユニクロと同様の画一的なデザインを、戦略として意図的に採用しているようだ。
JINSの眼鏡は、フレームの色は豊富であるが、フレームの形は同じものが多い。一般的には、成熟市場では顧客のニーズは細分化されると考えられる。一方、人間が十分に吟味できる選択肢は7つくらいとも言われている。 エア・フレームをはじめとする最低限のバリエーション・大量・低価格販売には、標準化を進めて低価格で売るという差別化戦略である。(JINSは眼鏡業界のユニクロ :: INSIGHT NOW!)
これらのことは、JINSの躍進の理由であると同時に、将来JINSのメガネがユニクロのフリースと同じ道を辿るであろうことを強く暗示している。